【演題】
19世紀ドイツにおけるJ.S.バッハ復興と音楽的価値の構築

【講演者】
宮本 直美 (みやもと なおみ) 氏

東京芸術大学にて音楽学を専攻し(音楽学修士)、その後東京大学にて博士号取得(社会学)。日本学術振興会特別研究員(DC1・PD)、東京大学文学部社会学研究室助手を経て現在、立命館大学文学部准教授。日本ではあまり知られていない領域である「音楽社会学」を専門とし、19世紀のドイツ市民社会における音楽の価値形成の過程を考察。その他、宝塚ファン組織、文化政策、音楽祭ツーリズム、「かわいい」文化論等を研究。主著は『教養の歴史社会学――ドイツ市民社会と音楽』(2006年・岩波書店・日本ドイツ学会奨励賞受賞)、『宝塚ファンの社会学――スターは劇場の外で作られる』(2010年・青弓社)。

【講演要旨】
音楽社会学とはどのような学問分野かはほとんど知られていません。今回はその一例として、19世紀ドイツにおけるバッハ復興をテーマにお話しします。このテーマは本来、ドイツ独特の社会層である教養市民層研究の一環として音楽を論じる中で取り上げたもので、当時のドイツの教養観とそれに密接に関わる音楽観を明らかにするためのものですが、今回は私の議論の中で比較的具体的と思われる部分を切り取って紹介します。
現在のクラシック音楽のコンサートでは「過去の作曲家」がプログラムを占めています。しかしこれは19世紀に作られた習慣であり、それ以前は、音楽は「新作」を聴くのが当たり前でした(現在のポピュラー音楽のように)。過去の音楽を聴くという新しい体験は、19世紀の人々にとって簡単なものではなく、100年ぶりの再演と銘打たれたバッハの《マタイ受難曲》は、実際にはそれほど歓迎されませんでした。そのバッハがなぜドイツを代表する音楽家として称えられることになったのかを見直すとき、単純に「バッハの音楽がすばらしいから人々が感動した」という幸福な物語が成立しないことが分かります。
社会学という分野は、社会で自明視されている価値観を問い直すという使命を持って成立した学問です。音楽社会学の実践は、素朴に信じられている芸術的価値がいかに恣意的に、偶然に、あるいは政治的に構築されているかを改めて問うということにつながります。

【日時】
2012年5月26日(土) 19:00開場、19:30講演開始

【場所】
Newnham College, Sidgwick Hall
※通常使用している部屋とは異なりますので、ご注意願います

Address: Newnham College, Sidgwick Avenue, Cambridge, CB3 9DF
http://g.co/maps/n7vyz

※会場のSidgwick Hallへの詳細は、以下の地図をご参照ください(14番の部屋)。当日はカレッジ内に道順を表示する予定です。
http://www.newn.cam.ac.uk/sites/www.newnham.local/uploads/files/About-Newnham/college_map_08.pdf

【会費】
会員 無料、非会員 (学生:2ポンド 非学生:3ポンド)