【題名】
「自然の造りあげたナノアート:タンパク質の構造」

【発表者】
越智崇氏(Department of Biochemistry)

【日時】
2009年12月05日(土) 19時30分~21時30分

【場所】
Graduate Union, 17 Mill Lane, Cambridge (Silver Street の角の入り口のほうから会場に入れます)

【会費】
会員 無料、非会員 (学生:2ポンド 非学生:3ポンド)

【発表要旨】
望遠鏡で空を眺めると星を観察することができ、さらに強力な望遠鏡を使えば、裸眼では見ることのできない星の細部を観ることができます。例えばそれは土星のリングであったり、または遠くの銀河であったりと。顕微鏡を使って池の水を観察してみると、これも裸眼では確認することが難しい、生物を観察することができます。小学校のとき理科の実験でプランクトンを観察して驚いた記憶などないでしょうか?そしてさらに強力な"顕微鏡"を使って生物を10億倍ほどまで拡大してみると、それを構成するブロックともいえる生体高分子、DNAやタンパク質などが見えてきます。その分子をさらに細部まで観察してみると、非常に美しい三次元構造を持っていることがわかります。生体高分子は一般的に特有の立体構造を持つことで機能を維持しています。したがって分子の構造を観察することで、分子レベルで生命活動を理解することができます。例えば、生物はどのように食べたものを分解し、栄養とするのか、人はどのようにして物を見ているのか、痛いと感じるのか、など。その結果、様々な生命活動を制御するにはどうすればいいのか考察することが可能となります。それは病原の解明、医療の発展などに役立ちます。

世界で初めて立体構造を観察されたタンパク質分子はミオグロビンといい、酸素を運搬する分子です。その歴史的実験はヘモグロビンの構造解析に成功したマックス・ペルーツとともにノーベル賞を受賞した、ジョン・ケンドリューによって、ここケンブリッジで行われました。有名なDNAの二重螺旋構造を明らかにしたワトソンとクリックはマックス・ペルーツの下、ここケンブリッジで研究を行っていた科学者であり、つまりケンブリッジは生体高分子の構造を観察する科学、構造生物学の発祥の地と言うことができます。それゆえに構造生物学はケンブリッジでは盛んに行われています。リボソームの構造解析に貢献した、今年のノーベル化学賞受賞者の一人、ベンキ・ラマクリシュナンもケンブリッジ分子生物学研究所の教授です。

今回の私の講義の主なテーマは分子の三次元構造についてですが、さらに基礎的な生体分子とは何かというところから初めてみたいと思います。そして、後半は私の研究テーマである、DNA修復のメカニズムについて分子生物学、構造生物学の観点から説明し、癌、世界に数人しか報告されていないような難病、さらには人間の免疫システムの構築にどう関係しているかについても触れてみたいと思います。