【題名】
ギャンブルの経済史:イギリス国営富くじの盛衰

【発表者】
新 広記 氏 (ヨーク大学歴史学部、鉄道・交通史研究所)

【日時】
2009年2月14日(土) 19時30分~21時30分

【場所】
Graduate Union, 17 Mill Lane, Cambridge

【発表要旨】
経済史の分野では近年、近代経済の発展における社会・文化的な要素の重要性に注目が集まっているおり、金融史ではとりわけこの傾向が活発である。金融システムの発展において文化が果たした役割を考慮することで、様々な出来事や制度は非常に異った意味合いを持ってくる。今回の発表で取り上げる国営富くじは、長らく伝統的な経済史家たちからは「正しい」経済活動からの逸脱であると考えられてきたのだが、経済=文化アプローチを用いることによって、行為そしてシステムとしての富くじが近代金融市場の形成に対して行った重要な貢献を明らかにすることができる。
直接賭け事に興じないかぎり、自分たちには「ギャンブル」など関係のないものだと思う人もいるかもしれないが、富くじの歴史からそれが必ずしも唯一の見方ではないことがわかる。イギリス国営富くじの創設と展開は、イギリスにおける経済そして社会の発展と分かちがたく結びついていたのであり、多数の人々は好むと好まざるとにかかわらず、富くじによる運の分配に参加していたのだ。よって富くじの歴史は怪しげなギャンブラーたちの話ではなく一般の人々の話であり、彼/彼女らの関与が制度や慣習を形づくり、そして時にはギャンブルへの反対運動へとつながっていったのである。
今回の発表では主に近代の国営富くじの公的導入(1693年)から、19世紀前半におけるその一時廃止まで取り上げる。今日行われている国営宝くじは、この近代富くじが20世紀において復活させられたものである。富くじの波乱に富んだ生涯は、近代の金融制度が国家の形成や消費文化という広いコンテクストの中に存在していたということを教えてくれる。さらにこの話は国家財政、広告業、博物館の設立から、戦争や奴隷貿易といった様々なトピックとも関連している。
この発表によって聴衆の皆さんに経済史、そしてより広くイギリス史についての新たな見方を提示することができれば幸いです。